設立前から法的リスクを整理する
会社設立時に弁護士へ相談するケース|契約・出資・共同創業のトラブルを防ぐ
弁護士は、契約、交渉、紛争、会社法など、法律問題全般を取り扱う専門家です。共同創業者がいる場合や、外部から出資を受ける場合、重要な知的財産を扱う場合などは、会社設立前から相談する方法があります。
このページでは、会社設立時に弁護士へ相談したいケース、依頼できる業務、司法書士などほかの専門家との違い、費用や依頼先を選ぶときのポイントを解説します。
会社設立時に弁護士へ相談する際の要点
- 主な相談分野
- 共同創業、出資、株主間契約、取引契約、知的財産、紛争予防などです。
- 相談するタイミング
- 持株比率や契約条件を確定する前に相談すると、内容を見直しやすくなります。
- 設立登記
- 弁護士が対応できる場合もありますが、登記実務は司法書士へ依頼するのが一般的です。
- 費用
- 相談料、契約書作成料、着手金、顧問料など、依頼内容によって異なります。
1. 会社設立時における弁護士の役割
一般的な小規模会社で、決まった形式の定款と登記書類を作成するだけであれば、必ずしも弁護士への依頼が必要とは限りません。
一方、複数人で会社を設立する場合や、投資家から出資を受ける場合、事業に重要な契約や知的財産がある場合は、設立前の決定が将来の経営権や利益配分に大きく影響します。
弁護士には、契約内容や会社の仕組みを法的な観点から確認し、将来起こり得るトラブルへの対応方法を検討してもらえます。
問題が起きる前の相談も可能です。
弁護士は、すでに発生した紛争への対応だけでなく、契約や権利関係を事前に整える予防法務についても相談できます。
2. 会社設立時に弁護士へ相談したいケース
- 複数人で共同創業する
- 外部の投資家から出資を受ける
- 創業者ごとの持株比率を慎重に決めたい
- 株主間契約や投資契約を作成したい
- 創業者が途中で退職した場合に備えたい
- 既存事業や個人の資産を会社へ引き継ぐ
- 特許、商標、著作物、ソフトウェアなどを扱う
- 取引先との重要な契約を締結する
- 競業避止や秘密保持を定めたい
- 設立前から当事者間に意見の対立がある
特に、共同創業者や投資家など複数の関係者がいる場合は、口約束だけで事業を始めないことが重要です。
関係が良好な設立時には、退職、病気、死亡、事業方針の対立などを想定しにくいものです。問題が起きた場合の対応を、事前に書面で決めておきましょう。
3. 共同創業者がいる場合
共同創業では、設立時の持株比率や役割分担が、将来の経営権や利益に大きく影響します。
持株比率を決める
持株比率は、出資した金額だけでなく、重要事項を決定する際の議決権にも関係します。
単純に同じ割合へ分けると、意見が分かれたときに意思決定できなくなる可能性があります。将来の増資や投資家の参加も考慮して検討します。
役割と責任を明確にする
- 担当する事業分野
- 取締役などの役職
- 意思決定の方法
- 役員報酬
- 成果物や知的財産の帰属
- 経費を使用できる範囲
- 重要事項について同意が必要な範囲
創業者が離脱する場合を決める
創業者が短期間で退職した場合に株式を保有し続けると、会社経営や新たな資金調達へ影響することがあります。
株式の取扱い、買戻しの条件、秘密保持、競業避止などを事前に検討します。
意見が対立した場合の対応を決める
協議方法、第三者の関与、株式の売却など、意思決定が停止した場合の対応を検討します。
4. 外部から出資を受ける場合
外部の投資家から出資を受ける場合は、出資金額だけでなく、株式の種類、議決権、情報提供、重要事項への同意権などを確認します。
主に確認したい事項
- 会社の評価額
- 投資家へ発行する株式数と持株比率
- 普通株式か種類株式か
- 議決権の内容
- 重要事項に対する事前承認
- 経営情報の報告義務
- 株式を売却する場合の条件
- 追加出資や将来の資金調達
- 創業者が退職した場合の取扱い
- 会社を売却する場合の取扱い
出資契約や株主間契約には、設立後の経営判断を制限する条項が含まれることがあります。内容を十分に理解せず署名しないようにしましょう。
出資を受けることと、融資を受けることは異なります。出資では原則として返済義務がない一方、投資家が株主となり、会社経営に関する権利を持つことになります。
5. 知的財産を会社へ引き継ぐ場合
会社設立前に創業者が制作・開発したものは、自動的に設立後の会社の所有になるとは限りません。
次のような知的財産や情報を使用する場合は、誰が権利を持ち、会社がどのように使用するのかを整理します。
- 会社名やサービス名
- ロゴやデザイン
- Webサイトや文章
- 写真・動画・イラスト
- ソフトウェアやソースコード
- 発明や技術
- 顧客情報や営業資料
- 業務マニュアルやノウハウ
確認したい権利関係
- 創業者個人から会社へ権利を譲渡するのか
- 会社へ使用を許諾するのか
- 外部の制作者から必要な権利を取得しているか
- 第三者の商標や著作物を侵害していないか
- 従業員や業務委託先の成果物を誰が所有するか
商標や特許などの出願・登録については、弁理士との連携が必要になる場合があります。
6. 設立時に準備したい契約書
事業内容によって必要な契約書は異なります。インターネット上のひな形をそのまま使用すると、実際の取引やリスクに合わない可能性があります。
| 書類 | 主な目的 |
|---|---|
| 創業者間契約 | 創業者の役割、持株比率、離脱時の取扱いなどを定めます。 |
| 株主間契約 | 株主間の意思決定、株式譲渡、情報提供などを定めます。 |
| 投資契約 | 出資条件、表明保証、投資家の権利などを定めます。 |
| 秘密保持契約 | 事業計画、技術、顧客情報などの秘密情報を保護します。 |
| 業務委託契約 | 業務内容、報酬、成果物、知的財産、責任範囲などを定めます。 |
| 取引基本契約 | 継続的な取引の条件、支払、損害賠償などを定めます。 |
| 利用規約 | Webサービスなどの利用条件や禁止事項を定めます。 |
| プライバシーポリシー | 個人情報の取得、利用目的、管理などについて示します。 |
契約書は作成するだけでなく、実際の営業方法や業務手順と内容が一致していることが重要です。
7. 弁護士へ設立登記も依頼できる?
弁護士は法律事務として登記へ対応できる場合があります。ただし、会社・法人登記の実務は、司法書士が代表的な依頼先です。
弁護士へ会社設立全体を相談した場合でも、設立登記は連携する司法書士が担当することがあります。
弁護士への相談が中心となる部分
- 創業者間の権利関係
- 株主間契約や投資契約
- 契約書の作成・確認
- 知的財産や法的リスク
- 交渉・紛争への対応
司法書士への依頼が中心となる部分
- 会社設立登記
- 登記申請書類の作成
- 役員変更登記
- 本店移転登記
- 増資などの変更登記
依頼前に、弁護士自身が登記まで担当するのか、司法書士へ別途依頼するのかを確認してください。
8. 会社設立前に弁護士へ相談するメリット
将来の対立を想定して契約を作成できる
共同創業者との関係が良好な段階で、意見の対立や離脱が起きた場合の対応を決められます。
契約条件のリスクを確認できる
出資契約や取引契約の内容を確認し、一方に過度な負担がないか検討できます。
会社法と契約を一体的に検討できる
定款、株主間契約、取締役会の運営などを、将来の経営方法に合わせて検討できます。
知的財産の帰属を整理できる
創業者、会社、従業員、外部委託先の間で、成果物や知的財産を誰が所有するか明確にできます。
問題が起きた場合も継続して相談できる
取引先とのトラブル、債権回収、株主間の対立などが発生した場合も相談できます。
9. 依頼前に確認したい点
一般的な設立手続きだけなら費用が大きくなる場合がある
定型的な会社設立登記だけを依頼したい場合は、司法書士へ依頼した方が目的に合う場合があります。
弁護士ごとに取扱分野が異なる
弁護士にも、企業法務、労働、知的財産、訴訟など、それぞれ取り扱う分野があります。
設立登記や税務は別の専門家が担当することがある
登記は司法書士、税務は税理士、社会保険は社会保険労務士などとの連携が必要になる場合があります。
契約を作ってもトラブルを完全に防げるとは限らない
契約書は問題を防ぎ、発生時の判断基準を明確にするために役立ちますが、すべての紛争を防げるものではありません。
事業内容を正確に説明する必要がある
実際の取引方法や収益構造が分からなければ、事業に合った契約やリスク対策を検討できません。
10. 弁護士へ相談する流れ
-
STEP 1
相談内容を整理する
共同創業、出資、契約など、確認したい問題を整理します。
-
STEP 2
対応分野を確認して問い合わせる
会社法、スタートアップ、契約などへの対応経験を確認します。
-
STEP 3
初回相談を受ける
事業計画、関係者、決定済みの条件、懸念点などを説明します。
-
STEP 4
依頼範囲と見積りを確認する
契約書作成、交渉、継続相談などの範囲と費用を確認します。
-
STEP 5
契約条件を検討する
弁護士の助言を受け、関係者間で条件を話し合います。
-
STEP 6
契約書・定款などを整える
決定した内容を契約書や定款へ反映します。
-
STEP 7
設立登記を行う
本人、弁護士、連携する司法書士などが登記手続きを進めます。
11. 相談前に準備したい情報
- 事業内容と収益の仕組み
- 創業者・出資者・役員の一覧
- 予定している持株比率
- 各創業者の役割と出資内容
- 外部から受ける出資の条件
- 設立予定の会社形態
- 定款案や契約書案
- 会社へ引き継ぐ資産や知的財産
- 取引予定の顧客・仕入先・外注先
- 現在認識している対立や懸念点
すべての条件が決まる前に相談することが重要です。契約への署名や出資条件の合意後では、内容の変更が難しくなる場合があります。
12. 弁護士へ依頼する費用
弁護士費用は、相談内容、契約書の複雑さ、交渉の有無、継続的な支援の有無などによって異なります。
| 費用項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 法律相談料 | 時間単位などで行う法律相談に対する費用です。 |
| 契約書作成料 | 創業者間契約、株主間契約、投資契約などを作成する費用です。 |
| 契約書レビュー料 | 相手方から提示された契約書などを確認・修正する費用です。 |
| 着手金 | 交渉や紛争対応などを正式に依頼するときに支払う費用です。 |
| 報酬金 | 依頼した案件の成果に応じて発生する場合がある費用です。 |
| 月額顧問料 | 継続的な法律相談や契約書確認などに対する費用です。 |
| 実費 | 郵送、証明書、交通費などが別途必要になる場合があります。 |
見積りで確認したい項目
- 相談料の計算方法
- 契約書の修正回数
- 相手方との交渉が含まれるか
- メールや電話相談の費用
- 登記費用が含まれるか
- 司法書士など他士業の報酬
- 顧問契約の期間と解約条件
- 追加費用が発生する条件
13. 弁護士の選び方
- 会社法や企業法務の取扱経験を確認する
- 創業・スタートアップ支援の経験を確認する
- 相談したい契約分野への対応経験を確認する
- 依頼できる業務と費用を確認する
- 会社設立登記の対応方法を確認する
- 司法書士や税理士などとの連携体制を確認する
- 事業内容を理解して説明してくれるか確認する
- 連絡方法と回答までの目安を確認する
会社設立の手続きだけを依頼したいのか、共同創業者との契約や出資条件まで相談したいのかを明確にしましょう。依頼目的によって適切な専門家は異なります。
14. 弁護士への相談に関するよくある質問
1人で小規模な会社を設立する場合も弁護士が必要ですか?
必ずしも必要とは限りません。一般的な設立登記だけであれば、自分で行うか司法書士へ依頼する方法があります。重要な契約や法的問題がある場合は弁護士への相談を検討してください。
共同創業者と仲が良くても契約は必要ですか?
関係が良好な時期にこそ、役割、持株比率、意思決定、離脱時の取扱いなどを書面で確認しておくことが重要です。
契約書へ署名した後でも相談できますか?
相談できますが、署名後は一方の判断だけで内容を変更できません。可能であれば、署名する前に相談してください。
インターネット上の契約書をそのまま使ってもよいですか?
ひな形が実際の事業、取引条件、当事者の関係に合うとは限りません。不要な条項や不足する条項がないか確認する必要があります。
弁護士へ会社設立登記も依頼できますか?
弁護士が登記へ対応できる場合はありますが、商業・法人登記は司法書士が代表的な依頼先です。弁護士自身が担当するのか、司法書士と連携するのか確認してください。
顧問弁護士は会社設立直後から必要ですか?
顧問契約が必須というわけではありません。契約の頻度、取引金額、従業員数、法的リスクなどを考慮し、個別相談と顧問契約を比較してください。
初回相談では何を持参すればよいですか?
事業計画、関係者の一覧、持株比率案、定款案、契約書案、これまでの話合いの記録などがあると相談しやすくなります。
参考となる公的情報
次に確認したいこと
相談内容に合う専門家を確認しましょう
司法書士、税理士、行政書士、社労士、弁護士の役割と依頼できる業務を比較できます。
