人材紹介会社の設立と許認可
人材紹介会社の設立と有料職業紹介事業の許可|要件・費用・申請手続きを解説
求人企業と仕事を探す人の間に入り、雇用契約の成立をあっせんして紹介手数料を受け取る事業を始めるには、原則として有料職業紹介事業の許可が必要です。会社設立前に確認したい資産、事業所、職業紹介責任者、個人情報管理、申請手続きの要点を分かりやすく解説します。
人材紹介会社設立と許可申請の要点
- 許可が必要な事業
- 求人と求職の申込みを受け、雇用関係の成立をあっせんし、手数料や報酬を受け取る場合は、原則として許可が必要です。
- 申請先
- 主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局を通じて、厚生労働大臣へ申請します。
- 財産的基礎
- 基準資産額と自己名義の現金・預貯金について、事業所数に応じた基準を満たす必要があります。
- 職業紹介責任者
- 各事業所に、一定の要件を満たして講習を受けた職業紹介責任者を選任します。
- 開業時期
- 会社を設立しただけでは人材紹介事業を開始できません。許可を受けてから営業を始めます。
1. 職業紹介事業とは
職業紹介とは、求人と求職の申込みを受け、求人者と求職者の間における雇用関係の成立をあっせんすることです。
求人企業から採用条件を聞き取り、求職者を募集して紹介し、面接の日程調整や採用条件の調整などを行う人材紹介サービスが代表的な例です。
有料職業紹介事業
- 職業紹介に対して手数料や報酬を受け取る
- 原則として厚生労働大臣の許可が必要
- 一般的な人材紹介会社が該当する
無料職業紹介事業
- 職業紹介の対価を受け取らない
- 事業主体に応じて許可または届出が必要
- 名称が無料でも、無条件に手続き不要とはならない
2. 有料職業紹介事業の許可が必要となるケース
サービス名ではなく、実際にどのような業務を行うかによって許可の必要性が判断されます。
許可が必要となる主な事業
- 求人企業から依頼を受けて求職者を紹介する
- 求職者の希望を確認して求人企業との間を取り持つ
- 面接や採用条件を調整して雇用成立を支援する
- 採用が決まったときに成功報酬を受け取る
- 職業紹介の対価として求人企業などから手数料を受け取る
ウェブサイトやSNSを使ったサービスでも、運営者が求人者と求職者の組み合わせを選び、採用に向けた連絡や調整へ関与する場合は、職業紹介に該当する可能性があります。
3. 求人情報提供・労働者派遣との違い
人材に関係するサービスには、職業紹介以外にも求人情報の提供や労働者派遣があります。それぞれ仕組みと必要な手続きが異なります。
| 事業 | 主な仕組み | 主な手続き |
|---|---|---|
| 職業紹介 | 求人者と求職者の間に入り、雇用関係の成立をあっせんする | 有料の場合は原則として許可 |
| 求人情報提供 | 求人情報や求職者情報を提供し、当事者同士が直接連絡する | サービスの機能や運営方法により、届出などが必要になる場合がある |
| 労働者派遣 | 派遣会社が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令の下で働かせる | 労働者派遣事業の許可 |
| 業務委託の仲介 | 雇用契約ではなく、業務委託契約の成立を支援する | 契約内容や実態により個別に判断する |
「マッチングサイト」「転職支援」「人材サービス」などの名称だけでは、必要な許可を判断できません。誰が候補者を選び、誰が連絡を取り、雇用成立へどこまで関与するのかを整理する必要があります。
4. 有料職業紹介事業で紹介できない職業
一般的な有料職業紹介事業の許可では、すべての職業を取り扱えるわけではありません。
- 港湾運送業務に就く職業
- 建設業務に就く職業
建設会社の事務職、営業職、施工管理などについては、実際の業務内容によって取り扱いの判断が異なる場合があります。職種名だけで判断せず、具体的な仕事内容を確認しましょう。
5. 財産的基礎の要件
有料職業紹介事業の許可を受けるには、事業を安定して運営できる財産的基礎が必要です。
| 確認項目 | 基準の考え方 |
|---|---|
| 基準資産額 | 500万円に、有料職業紹介事業を行う事業所数を乗じた額以上 |
| 現金・預貯金 | 1事業所目は150万円以上。事業所が追加される場合は、追加1事業所につき60万円を加算 |
基準資産額は、単純な資本金額ではありません。原則として、資産の総額から負債の総額を差し引いて計算し、繰延資産や営業権などは資産から除かれます。
6. 職業紹介責任者の要件
有料職業紹介事業を行う各事業所には、職業紹介業務を適正に管理する職業紹介責任者を選任します。
職業紹介責任者の主な確認事項
- 成年者である
- 一定の職業経験がある
- 欠格事由に該当しない
- 事業所へ適切に配置できる
- 厚生労働大臣が指定する職業紹介責任者講習を修了している
- 職業紹介に従事する人数に応じて必要人数を確保している
原則として、職業紹介業務に従事する者50人につき1人以上の職業紹介責任者を選任します。
代表取締役が職業紹介責任者を兼ねることも考えられますが、実際に責任者として業務を管理できる勤務体制が必要です。
7. 事業所の要件
職業紹介事業を行う事業所には、業務を適正に運営し、求職者などの個人情報や秘密を保護できる環境が求められます。
- 事業を継続的に行える使用権限がある
- 求人者や求職者からの相談へ適切に対応できる
- 個人情報を安全に保管できる設備がある
- 面談内容などが第三者へ漏れないよう配慮されている
- 他の事業と併用する場合も業務を適正に区分できる
オンライン面談を中心に運営する場合でも、事業所の所在地や個人情報管理体制などの確認は必要です。
8. 個人情報管理と事業運営の体制
人材紹介会社は、氏名、住所、職歴、学歴、希望条件などの重要な個人情報を取り扱います。許可申請時には、個人情報を適正に管理できる体制も確認されます。
整備したい主な項目
- 個人情報適正管理規程
- 個人情報を取り扱う担当者と権限
- 書類やデータの保管方法
- パソコンやクラウドサービスのアクセス管理
- 情報漏えいが発生した場合の対応
- 苦情を受け付ける窓口と処理方法
- 求職者情報を利用する目的の明示
個人情報保護方針をウェブサイトへ掲載するだけでなく、社内で実際に運用できる管理方法を決めることが重要です。
9. 会社設立前に決めること
許可申請を予定している場合は、会社設立の段階から許可要件を考慮しておきましょう。
- 取り扱う業界と職種
- 有料職業紹介と他の人材サービスの範囲
- 本店と職業紹介事業所の所在地
- 職業紹介責任者となる人
- 資本金と申請時の資産・預貯金
- 紹介手数料の徴収方法
- 求人者と求職者の募集方法
- 個人情報を管理する方法
- 返戻金制度の内容
定款の事業目的
定款には、予定する事業に合わせて「有料職業紹介事業」などの目的を記載します。
求人情報提供、採用支援、労働者派遣、業務委託の仲介なども行う予定がある場合は、それぞれの事業内容と必要な許認可を整理し、適切な事業目的を検討しましょう。
10. 会社設立から営業開始までの流れ
-
1
サービス内容を整理する
求人情報の掲載だけなのか、雇用成立まであっせんするのかを整理し、必要な許可や届出を確認します。
-
2
管轄労働局へ事前相談する
サービスの仕組み、事業所、資産要件、申請時期などを相談します。
-
3
会社の基本事項を決める
商号、事業目的、本店所在地、資本金、役員構成などを決定します。
-
4
会社を設立する
定款を作成し、資本金の払込みと設立登記を行います。
-
5
職業紹介責任者を選任する
要件を満たす人を確保し、指定された責任者講習を受講します。
-
6
事業所と管理体制を整える
面談環境、個人情報の保管方法、苦情対応などの体制を整備します。
-
7
申請書類を準備する
事業計画、手数料表、財務資料、責任者や事業所に関する書類を準備します。
-
8
許可を申請する
主たる事務所を管轄する都道府県労働局を通じて、厚生労働大臣へ申請します。
-
9
審査と必要な補正へ対応する
書類審査や確認に対応し、追加資料などを求められた場合は提出します。
-
10
許可後に営業を開始する
許可証を受け取り、必要な表示や帳簿などを整えてから職業紹介事業を始めます。
11. 申請時に準備する主な書類
法人の状況や事業所数などによって異なりますが、一般的には次のような書類を準備します。
- 有料・無料職業紹介事業許可申請書
- 有料・無料職業紹介事業計画書
- 届出制手数料に関する書類
- 定款または寄附行為
- 履歴事項全部証明書
- 役員の住民票や履歴書など
- 職業紹介責任者に関する書類
- 職業紹介責任者講習の受講証明書
- 貸借対照表や損益計算書などの財務資料
- 預貯金残高を確認する書類
- 事業所の使用権限を確認できる書類
- 事業所の平面図
- 個人情報適正管理規程
- 業務運営規程
- 手数料表
設立直後の会社は決算を迎えていないため、既存会社とは提出する財務資料が異なる場合があります。最新の提出書類一覧を管轄労働局へ確認してください。
12. 申請と開業に必要な費用
許可申請では、申請手数料と登録免許税が必要です。そのほか、会社設立や事業所、システムなどの費用も考慮します。
| 費用 | 金額・内容の目安 |
|---|---|
| 新規許可申請手数料 | 5万円。事業所が2つ以上の場合は、追加1事業所につき1万8,000円を加算 |
| 登録免許税 | 9万円 |
| 会社設立費用 | 定款認証、登録免許税、証明書取得など |
| 講習受講費用 | 職業紹介責任者講習の受講料 |
| 事業所費用 | 敷金、賃料、備品、通信環境など |
| システム費用 | 求人・求職者管理、ウェブサイト、情報管理など |
申請手数料などは変更される可能性があります。実際に申請する際は、管轄労働局の最新案内を確認してください。
13. 紹介手数料の決め方
有料職業紹介事業者が徴収する手数料は、法令に従って定め、所定の手続きを行う必要があります。
主な手数料制度
上限制手数料
法令で定められた上限の範囲内で手数料を徴収する方式です。
届出制手数料
手数料表を届け出て、届け出た範囲内で手数料を徴収する方式です。
実務では、採用者の想定年収に一定割合を乗じた成功報酬方式などが用いられますが、契約内容と届け出た手数料表を一致させる必要があります。
返戻金制度
紹介した人が入社後短期間で退職した場合などに、紹介手数料の一部を求人企業へ返還する制度を設けることがあります。返還の条件、割合、対象期間を明確にしておきましょう。
14. 許可取得後に必要な対応
許可取得後も、適切な事業運営と定期的な手続きが必要です。
- 許可番号などの必要事項を適切に表示する
- 求人票や求職申込書などを適切に管理する
- 求人者と求職者へ必要事項を明示する
- 取扱状況に関する帳簿を整備する
- 個人情報を利用目的の範囲内で取り扱う
- 手数料表や返戻金制度を適切に明示する
- 毎年度の事業報告書を提出する
- 所在地や役員などの変更時に必要な届出を行う
- 有効期限までに更新申請を行う
有料職業紹介事業の許可有効期間は、新規許可では3年、更新後は5年です。更新申請は原則として、有効期間が満了する日の3か月前までに行います。
15. 人材紹介会社の設立でよくある注意点
- 職業紹介と求人情報提供の違いを整理していない
- 資本金だけで資産要件を満たすと考えていた
- 開業費を支払った結果、預貯金の基準を下回った
- 職業紹介責任者講習の受講が間に合わなかった
- 事業所の情報管理体制が不十分だった
- 定款に必要な事業目的を記載していなかった
- 許可前に求人・求職の申込みを受けてしまった
- 届け出た手数料表と実際の契約内容が一致していなかった
- 事業報告書や変更届の提出を忘れていた
会社設立、事務所契約、責任者講習、許可申請にはそれぞれ準備期間が必要です。希望する営業開始日から逆算して計画を立てましょう。
16. 人材紹介会社設立前チェックリスト
- サービスが職業紹介に該当するか確認した
- 取り扱う業界と職種を決めた
- 取扱禁止職業に該当しないことを確認した
- 管轄労働局へ事前相談した
- 定款へ適切な事業目的を記載した
- 基準資産額と現金・預貯金の要件を確認した
- 職業紹介責任者を確保した
- 責任者講習の受講予定を確認した
- 事業所の使用条件と情報管理環境を確認した
- 個人情報適正管理規程などを準備した
- 手数料と返戻金制度を決めた
- 許可取得までの運転資金を確保した
- 営業開始前に必要な手続きを確認した
17. 人材紹介会社の設立に関するよくある質問
一人で人材紹介会社を設立できますか?
株式会社や合同会社は一人でも設立できます。ただし、有料職業紹介事業を始めるには、財産的基礎、職業紹介責任者、事業所などの許可要件をすべて満たす必要があります。
職業紹介責任者に資格試験はありますか?
宅地建物取引士のような国家資格試験ではありませんが、職業経験などの要件を満たし、指定された職業紹介責任者講習を修了する必要があります。
資本金は500万円必要ですか?
許可基準では、資本金そのものではなく、資産から負債を差し引いた基準資産額や現金・預貯金の額が確認されます。会社設立後の支出も考慮して資金を準備してください。
自宅を事業所にできますか?
使用権限、相談への対応、個人情報や秘密を守れる環境などを確保できるかによって判断されます。契約や設備の準備を進める前に、管轄労働局へ相談してください。
オンラインだけで人材紹介事業を運営できますか?
面談や連絡をオンラインで行うことは考えられますが、許可を受ける事業所や職業紹介責任者、個人情報管理などの要件がなくなるわけではありません。
求人サイトを運営するだけでも許可が必要ですか?
求人情報を掲載し、利用者同士が直接連絡するだけであれば、職業紹介に該当しない場合があります。ただし、候補者の選定や連絡、採用条件の調整などへ関与すると、職業紹介と判断される可能性があります。
有料職業紹介事業の許可は何年間有効ですか?
新規許可の有効期間は3年です。更新後の有効期間は5年となり、継続する場合は期限までに更新申請が必要です。
参考情報
許可基準、必要書類、申請方法、手数料などは、法令改正や申請者の状況によって変更・追加される場合があります。実際に申請するときは、主たる事務所を管轄する都道府県労働局へ事前に相談し、最新の案内をご確認ください。
次に確認したいこと
許認可について専門家へ相談する前に
行政書士へ相談できる内容と、司法書士などほかの専門家との違いを確認できます。
