社会保険・労働保険・雇用の専門家
会社設立後に社労士へ相談すること|社会保険・労働保険・雇用手続きを解説
社会保険労務士は、健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険、人事・労務管理などの専門家です。会社設立後に役員報酬を支給する場合や、従業員を雇用する場合には、必要な手続きを確認する必要があります。
このページでは、会社設立後に社会保険労務士へ依頼できること、社会保険と労働保険の違い、依頼するメリット、費用や事務所を選ぶ際のポイントを解説します。
会社設立後に社労士へ相談する際の要点
- 主な専門分野
- 社会保険、労働保険、従業員の入退社、給与計算、人事・労務管理などです。
- 役員だけの会社
- 法人は、事業主のみの場合を含め、原則として社会保険の適用対象となります。
- 従業員を雇用する会社
- 労働者を1人でも雇用する場合、原則として労働保険の成立手続きが必要です。
- 相談するタイミング
- 役員報酬の支給や従業員の雇用を開始する前に相談すると準備しやすくなります。
1. 社会保険労務士とは
社会保険労務士は、労働・社会保険に関する手続きや、人事・労務管理を扱う専門家です。一般的に「社労士」と呼ばれます。
会社設立登記を行う専門家ではありませんが、設立後に必要となる社会保険や労働保険の手続き、従業員の雇用、給与計算、就業規則などを相談できます。
社労士が扱う主な分野
- 健康保険・厚生年金保険
- 労災保険・雇用保険
- 従業員の入社・退職手続き
- 給与計算
- 就業規則
- 雇用契約・労働条件
- 勤怠管理
- 人事・労務に関する相談
- 雇用関係助成金
- 年金に関する相談
2. 社会保険と労働保険の違い
会社設立後に使われる「社会保険」という言葉は、広い意味では複数の保険制度を指します。実務では、健康保険・厚生年金保険と、労災保険・雇用保険を分けて考えることがあります。
| 区分 | 制度 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 社会保険 | 健康保険 | 業務外の病気やけが、出産などに備える制度です。 |
| 社会保険 | 厚生年金保険 | 老齢、障害、死亡などに備える年金制度です。 |
| 労働保険 | 労災保険 | 業務中や通勤中のけが、病気、死亡などに備える制度です。 |
| 労働保険 | 雇用保険 | 失業、育児休業、介護休業、雇用継続などに関係する制度です。 |
健康保険・厚生年金保険と、労災保険・雇用保険では加入要件、対象者、提出先が異なります。
3. 代表者1人の会社でも社会保険は必要?
日本年金機構は、常時従業員を使用する法人事業所について、事業主のみの場合を含め、健康保険・厚生年金保険への加入が法律上必要になると案内しています。
代表者1人だけの会社でも、役員報酬を受け取る代表者が常時使用される状態であれば、原則として社会保険の加入対象となります。
設立時に確認する主な手続き
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 保険料口座振替納付申出書
役員報酬を支給しない場合などは取扱いが異なることがあります。
無報酬の役員しかおらず、被保険者となる人がいない法人事業所は、適用事業所の要件を満たさない場合があります。個別の状況は、年金事務所または社会保険労務士へ確認してください。
役員報酬は、税務上の取扱いにも関係します。金額や支給開始時期は、税理士とも相談して決める方法があります。
4. 従業員を雇用する場合に必要な手続き
従業員を1人でも雇用する場合は、雇用形態や労働時間などを確認し、労働保険や社会保険の手続きを行います。
厚生労働省は、常勤、パート、アルバイトなどの名称にかかわらず、労働者を1人でも雇用する事業について、原則として労働保険の成立手続きが必要と案内しています。
事業所に関する主な手続き
- 労働保険保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
- 雇用保険適用事業所設置届
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
従業員に関する主な手続き
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
雇用開始前に準備したい書類
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿などの勤怠記録
- 給与計算に必要な届出書類
社会保険や雇用保険への加入対象になるかは、雇用形態の名称だけでなく、労働時間、勤務日数、契約期間、賃金などによって判断します。
5. 社労士へ依頼できる主な業務
| 業務 | 主な内容 |
|---|---|
| 社会保険の新規適用 | 健康保険・厚生年金保険の事業所加入手続きを支援します。 |
| 労働保険の成立手続き | 労災保険・雇用保険に関する事業所の手続きを支援します。 |
| 入退社手続き | 従業員の資格取得・資格喪失などの手続きを行います。 |
| 算定基礎届 | 社会保険料を決めるための定時決定に関する手続きを行います。 |
| 労働保険の年度更新 | 年度ごとの労働保険料の申告手続きを行います。 |
| 給与計算 | 毎月の給与、社会保険料、時間外手当などを計算します。 |
| 就業規則 | 会社の労働条件や職場のルールを整備します。 |
| 労務相談 | 労働時間、休暇、休職、退職などについて相談できます。 |
| 雇用関係助成金 | 利用できる制度の確認や、対応可能な申請手続きを支援します。 |
依頼できる業務は社労士事務所によって異なります。給与計算や助成金が顧問契約に含まれるとは限らないため、契約前に確認してください。
6. 給与計算を依頼する場合
給与計算では、基本給だけでなく、残業代、欠勤控除、社会保険料、雇用保険料、所得税などを正しく計算する必要があります。
給与計算を依頼するときの確認項目
- 毎月の勤怠情報を提出する期限
- 給与の締日と支払日
- 残業・休日・深夜労働の集計方法
- 社会保険料の控除時期
- 給与明細の発行方法
- 振込データを作成してもらえるか
- 賞与計算に対応しているか
- 年末調整に対応しているか
給与計算を社労士へ依頼しても、給与の振込みや経費精算まで代行されるとは限りません。作業範囲と会社側で行う業務を明確にしましょう。
年末調整や源泉所得税など税務に関係する業務については、税理士との連携方法も確認してください。
7. 就業規則・雇用契約・労務管理
従業員を雇用すると、労働時間、休日、休暇、賃金、退職などのルールが必要になります。
設立直後に整えたい主な項目
- 労働条件通知書・雇用契約書
- 勤務時間・休憩・休日
- 残業や休日労働の取扱い
- 賃金・手当・賞与
- 年次有給休暇
- 欠勤・遅刻・早退
- 休職・復職
- 退職・解雇
- 秘密保持・情報管理
- ハラスメント防止
就業規則の届出が必要になる場合
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
10人未満の場合でも、労働条件や職場のルールを明確にするために就業規則や社内規程を整備する方法があります。
インターネット上のひな形をそのまま使用すると、実際の勤務制度や会社の運用と合わない場合があります。規則の内容と実際の運用を一致させることが重要です。
8. 雇用関係助成金を相談する場合
従業員の採用、雇用環境の改善、人材育成などに関係する助成金を利用できる場合があります。
助成金には、雇用保険への加入、労働関係法令の遵守、計画の事前提出など、それぞれ細かな要件があります。
助成金を検討するときの注意点
- 採用や制度導入を行う前に相談する
- 申請期限と事前計画の必要性を確認する
- 労働保険料の未納がないか確認する
- 出勤簿や賃金台帳を正しく整備する
- 就業規則と実際の運用を一致させる
- 支給決定までに時間がかかる可能性を考慮する
助成金は必ず受給できるものではありません。
制度の要件を満たし、審査を経て支給が決定されます。助成金を前提に資金繰りを組まないようにしましょう。
9. 社労士へ依頼するメリット
加入要件と必要な手続きを確認できる
役員や従業員ごとに社会保険・雇用保険への加入要件を確認できます。
提出期限のある手続きを管理しやすい
新規適用、資格取得、年度更新、算定基礎届などの手続きを整理できます。
給与計算と社会保険手続きを連携できる
給与額の変更、賞与、入退社などを給与計算と社会保険手続きへ反映しやすくなります。
雇用開始前に労働条件を整えられる
雇用契約書、労働時間、賃金、休日などを従業員の採用前に確認できます。
労務トラブルを予防しやすくなる
職場のルールや記録方法を整えることで、労働条件に関する認識の違いを防ぎやすくなります。
10. 依頼前に確認したい点
会社設立登記は依頼できない
社労士は、会社設立登記を行う専門家ではありません。設立登記は司法書士が代表的な依頼先です。
税務申告は別の専門分野になる
法人税、消費税、源泉所得税などの税務相談や税務申告は、税理士が主な相談先です。
給与計算が顧問料に含まれない場合がある
社会保険手続きと給与計算は、別のサービスとして料金が設定されることがあります。
助成金だけの依頼を受け付けない場合がある
日頃の労務管理状況を確認できない場合、助成金申請だけを受け付けない社労士事務所もあります。
会社側でも正確な情報管理が必要
勤怠、給与、従業員情報などが正確でなければ、手続きや給与計算を正しく行えません。
11. 社労士へ依頼する流れ
-
STEP 1
会社と雇用の状況を整理する
役員報酬、従業員数、雇用開始日、勤務条件などを整理します。
-
STEP 2
社労士へ相談する
必要な保険手続き、給与計算、労務管理について相談します。
-
STEP 3
依頼範囲と見積りを確認する
初期手続き、月次顧問、給与計算などの料金を確認します。
-
STEP 4
必要書類を準備する
登記事項証明書、賃金情報、役員・従業員情報などを準備します。
-
STEP 5
事業所の加入手続きを行う
社会保険や労働保険について、必要な事業所手続きを行います。
-
STEP 6
役員・従業員の手続きを行う
加入要件を確認し、資格取得などの手続きを行います。
-
STEP 7
継続的な労務管理を行う
入退社、給与変更、年度更新などへ継続して対応します。
12. 相談前に準備したい情報
- 会社の設立日
- 本店・事業所の所在地
- 事業内容
- 役員の人数と役員報酬
- 従業員の人数
- 雇用開始日
- 雇用形態
- 勤務時間・勤務日数
- 給与の金額と締日・支払日
- 扶養家族の有無
- 給与計算を依頼するか
- 利用を検討している助成金
提出を求められることがある資料
- 登記事項証明書
- 法人番号を確認できる書類
- 役員・従業員の基礎情報
- マイナンバー関係書類
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 賃金台帳・出勤簿
- 事業所の賃貸借契約書
実際に必要な資料は手続きによって異なります。個人情報を送付する方法と管理体制も確認しましょう。
13. 社労士へ依頼する費用
社労士費用は、従業員数、手続きの数、給与計算の有無、相談頻度などによって異なります。
| 費用項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 初期手続きの報酬 | 社会保険の新規適用や労働保険の成立手続きなどの費用です。 |
| 月額顧問料 | 入退社手続きや労務相談など、継続的な支援に対する費用です。 |
| 給与計算料 | 毎月の給与計算に対する費用で、人数に応じて変わる場合があります。 |
| 就業規則作成料 | 就業規則や各種社内規程を作成する費用です。 |
| 年度更新・算定基礎届 | 年に一度の手続きとして、顧問料とは別に発生する場合があります。 |
| 助成金申請報酬 | 着手金や支給額に応じた報酬が設定される場合があります。 |
見積書で確認したい項目
- 初期手続きと顧問料の区分
- 顧問料に含まれる手続き
- 従業員が増えた場合の料金
- 給与計算が含まれるか
- 年度更新・算定基礎届の費用
- 就業規則の作成・変更費用
- 助成金の相談・申請費用
- 契約期間と解約条件
14. 社労士の選び方
- 設立直後の法人への対応経験を確認する
- 予定している業種への対応経験を確認する
- 必要な手続きが顧問料に含まれるか確認する
- 給与計算に対応しているか確認する
- 就業規則や労務相談にも対応できるか確認する
- 助成金の対応範囲と報酬を確認する
- 税理士や司法書士との連携体制を確認する
- 相談方法と回答までの目安を確認する
従業員を雇用する予定がある場合は、雇用開始日より前に相談すると、労働条件や必要書類を準備しやすくなります。
15. 社労士への相談に関するよくある質問
代表者1人だけでも社会保険へ加入しますか?
法人は、事業主のみの場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用対象です。ただし、役員報酬がなく被保険者となる人がいない場合などは、取扱いが異なることがあります。
従業員がいなくても労働保険へ加入しますか?
代表者や役員だけで労働者を雇用していない場合は、通常の労働者を対象とする労働保険の成立手続きとは取扱いが異なります。従業員を雇用するときに改めて確認してください。
アルバイトを1人雇う場合も労災保険は必要ですか?
原則として、雇用形態の名称にかかわらず、労働者を1人でも雇用する事業は労災保険の適用対象です。雇用保険への加入は、労働時間などの要件を別途確認します。
会社設立登記も社労士へ依頼できますか?
会社設立登記は、司法書士が代表的な依頼先です。社労士には、設立後の社会保険や労働保険などを相談します。
給与計算だけを依頼できますか?
給与計算だけを受け付ける事務所もあります。社会保険手続きとの連携方法、勤怠情報の提出方法、年末調整への対応を確認しましょう。
従業員が10人未満なら就業規則は不要ですか?
常時10人未満の事業場では、法律上の作成・届出義務がない場合があります。ただし、職場のルールを明確にするため、人数が少ない段階から整備する方法もあります。
社労士へ依頼すれば助成金を必ず受給できますか?
必ず受給できるわけではありません。会社が制度の要件を満たし、審査を経て支給が決定される必要があります。
参考となる公的・専門機関の情報
次に確認したいこと
相談内容に合う専門家を確認しましょう
司法書士、税理士、行政書士、社労士、弁護士の役割と依頼できる業務を比較できます。
