自分で会社設立

会社設立でよくある失敗例15選|自分で手続きする際の注意点

会社設立は自分で進めることもできますが、定款や登記申請書の作成だけでなく、設立後の税務、社会保険、許認可まで考えて準備する必要があります。

このページでは、自分で会社を設立するときに起こりやすい失敗を、会社設計、定款、資本金、登記申請、設立後の手続きに分けて解説します。

会社設立で失敗しないための要点

会社設計
設立手続きだけでなく、許認可、税金、社会保険、融資、事業運営まで考えて決めます。
書類の整合性
定款、決議書、就任承諾書、登記申請書の表記を一致させます。
申請時期
希望する設立日から逆算し、定款認証や資本金の払込みを進めます。
設立後の対応
登記完了後の税務、社会保険、労働保険、許認可の手続きも整理します。

1. 会社設立で失敗が起こる理由

会社設立では、書類を提出して登記を完了させることに意識が集中しやすくなります。

しかし、会社の基本事項は、設立後の税金、社会保険、許認可、資金調達、法人口座、取引先との契約などにも影響します。

設立手続き上の失敗

  • 必要書類が不足している
  • 書類ごとの表記が一致していない
  • 資本金の払込み方法が適切でない
  • 管轄法務局を間違えている

設立後に分かる失敗

  • 許認可を取得できない
  • 想定より維持費がかかる
  • 出資者や役員の間で意見が対立する
  • 融資や法人口座の準備が進まない
登記できる内容であることと、設立後の事業運営に適した内容であることは同じではありません。会社設立後の運営まで考えて決めることが重要です。

2. 商号を十分に確認していない

商号とは会社の正式な名称です。株式会社の場合は「株式会社」、合同会社の場合は「合同会社」という文字を商号に含める必要があります。

登記できる商号であっても、既存企業の名称や登録商標と似ている場合は、事業開始後に問題となる可能性があります。

  • 同じ住所に同じ商号の会社がないか
  • 同業他社と誤認される名称ではないか
  • 登録商標と抵触する可能性がないか
  • 検索したときに見つけやすい名称か
  • ドメイン名やSNSアカウントを取得できるか
  • 電話で伝えやすい名称か
商号を変更すると変更登記が必要になり、銀行口座、契約書、請求書、ホームページなどの修正も発生します。

3. 事業目的が不足している

事業目的は、会社がどのような事業を行うかを示す登記事項です。現在行う事業だけでなく、近い将来に行う予定の事業も検討します。

  • 実際の事業内容が事業目的から読み取れない
  • 許認可に必要な表現が記載されていない
  • 将来行う予定の事業が含まれていない
  • 意味が不明確な表現を使用している
  • 事業と関係のない目的を過剰に記載している

設立後に事業目的を追加する場合は、株主総会などで定款を変更し、変更登記を行う必要があります。

許認可が必要な事業では、申請先へ定款の事業目的に必要な表現を事前確認してください。

4. 本店所在地を住所だけで決める

自宅、賃貸事務所、レンタルオフィス、バーチャルオフィスなどを本店所在地にできます。ただし、登記できることだけで判断するのは危険です。

確認項目 確認する内容
契約条件 賃貸借契約や利用規約で法人登記や事業利用が認められているか確認します。
許認可 事務所の独立性、広さ、設備などの要件を満たせるか確認します。
郵便物 官公署、銀行、取引先からの郵便物を確実に受け取れるか確認します。
法人口座・融資 金融機関から事業実態について説明を求められた場合に対応できるか確認します。
移転予定 短期間で移転すると変更登記や各種届出が必要になります。

本店所在地・オフィスの決め方を見る

5. 資本金を少なすぎる金額にする

資本金を少額にすると、会社設立時の負担を抑えられます。しかし、資本金は設立後の事業資金として使用するため、金額が少なすぎるとすぐに資金不足になる可能性があります。

  • 事務所の初期費用
  • 設備や備品の購入費
  • 商品の仕入費用
  • 広告宣伝費
  • 役員報酬と従業員給与
  • 社会保険料
  • 専門家への報酬
  • 売上入金までの運転資金
資本金の金額は、許認可、融資、取引先からの信用、税務上の取扱いなどにも影響する場合があります。単に少ない方がよいとは限りません。

会社設立にかかる費用を確認する

6. 決算月を深く考えずに決める

事業年度の最終月が決算月です。会社設立月から近すぎる月を決算月にすると、最初の事業年度が短くなり、早い時期に決算と申告が必要になります。

  • 会社設立月から最初の決算月までの期間
  • 売上や業務の繁忙期
  • 在庫を確認しやすい時期
  • 資金繰りに余裕がある時期
  • 税理士へ相談しやすい時期
  • 役員報酬を検討する時期

「多くの会社が3月決算だから」という理由だけで決めず、自社の事業サイクルに合わせて検討します。

7. 会社形態を比較せずに決める

株式会社と合同会社では、設立費用だけでなく、意思決定の方法、利益配分、役員任期、対外的な説明のしやすさなどが異なります。

株式会社を検討したい場合

  • 株式による出資を受ける可能性がある
  • 取引先への説明のしやすさを重視する
  • 将来の事業拡大を想定している
  • 会社の所有と経営を分けたい

合同会社を検討したい場合

  • 設立時の費用を抑えたい
  • 少人数で会社を運営する
  • 柔軟な利益配分を検討したい
  • 迅速に意思決定したい

株式会社と合同会社の違いを見る

8. 役員構成や出資割合を曖昧にする

友人、家族、共同経営者と会社を設立する場合は、役割や出資割合を曖昧にしたまま進めないようにします。

  • 誰が最終的な意思決定をするか決めていない
  • 出資割合と業務上の役割が整理されていない
  • 役員報酬の決め方を話し合っていない
  • 利益配分について認識が異なる
  • 共同経営者が退任する場合の対応を決めていない
  • 株式や持分を譲渡する場合の条件を決めていない

出資者が複数いる場合は、将来意見が分かれた場合の意思決定方法も考えておく必要があります。

9. 定款の内容を確認せずに確定する

定款は会社運営の基本的な規則です。インターネット上のひな形をそのまま使うと、自社の役員構成や事業内容に合わない規定が含まれる可能性があります。

  • 商号が正しい
  • 事業目的が事業内容に合っている
  • 本店所在地の記載方法が正しい
  • 公告方法を確認した
  • 発行可能株式総数を確認した
  • 株式譲渡制限の内容を確認した
  • 役員の任期を確認した
  • 事業年度を確認した
株式会社の定款は、原則として公証人による認証が必要です。合同会社では公証人による定款認証は必要ありません。

10. 資本金の払込み方法を間違える

会社設立前は、原則として設立する会社名義の銀行口座を開設できません。発起人などの個人口座を使用して、資本金を払い込みます。

  • 定款作成前など適切でない時期に払い込む
  • 払込先として使用できない口座を使う
  • 誰が払い込んだか確認できない
  • 定款に記載した金額と払込額が一致しない
  • 通帳の名義や支店情報が分かるページを保存していない
  • 取引履歴の該当部分を確認できない

払込みを証明する書類には、口座名義、金融機関名、支店名、口座番号、払込日、払込額などを確認できる資料を使用します。

11. 登記書類の表記が一致していない

会社設立登記では、複数の書類に同じ情報を記載します。書類ごとに表記が異なると、法務局から補正を求められる可能性があります。

確認項目 起こりやすい不一致
商号 「株式会社」の位置、記号、全角・半角などが異なる。
本店所在地 番地の書き方や建物名の有無が書類によって異なる。
事業目的 定款と登記すべき事項で文言や順番が異なる。
役員の氏名・住所 住民票や印鑑証明書と表記が異なる。
公告方法 定款に記載した内容と登記申請内容が異なる。
資本金 定款、決議書、払込みを証する書面の金額が一致しない。
法務省は、オンラインによる設立登記申請で多い補正例として、商号、本店所在地、公告方法、定款、払込みを証する書面、電子署名などを案内しています。

12. 会社設立日の考え方を間違える

原則として、会社設立登記の申請日が会社の設立日になります。登記が完了した日ではありません。

  • 法務局が業務を行わない日を設立日にしようとする
  • 郵送申請で到着日を正確に管理できていない
  • オンライン申請を受付時間終了後に送信する
  • 希望日までに定款認証や払込みが終わっていない
  • 書類の不備による補正期間を考慮していない
オンライン申請を休日や法務局の受付時間終了後に送信した場合は、翌業務日の受付になることがあります。希望する設立日がある場合は、事前に受付条件を確認してください。

13. 許認可を会社設立後に確認する

飲食業、建設業、不動産業、人材紹介業、古物営業などは、事業を始める前に許可、登録、届出などが必要になる場合があります。

事業の例 主な確認事項
飲食店 店舗の設備、食品衛生責任者、保健所の営業許可などを確認します。
建設業 経営業務、専任技術者、財産的基礎、営業所などの要件を確認します。
不動産業 事務所、専任の宅地建物取引士、営業保証金などを確認します。
人材紹介・派遣業 事務所、責任者、資産などの要件を確認します。
古物商 営業所、管理者、取扱品目などを確認します。
許認可によっては、定款の事業目的、資本金、本店所在地、営業所の構造などに条件があります。定款作成や事務所契約の前に確認してください。

許認可が必要な業種を確認する

14. 融資の相談を始めるのが遅い

会社設立後に資金が不足してから融資先を探すと、事業開始や仕入れ、給与の支払いに間に合わない可能性があります。

  • 事業開始に必要な設備資金
  • 売上入金までに必要な運転資金
  • 自己資金として用意できる金額
  • 資本金として会社へ入れる金額
  • 融資を受けたい時期
  • 事業計画書の作成時期
  • 見積書や契約書を準備できる時期

自治体の制度融資や特定創業支援等事業など、会社設立前から相談した方がよい制度もあります。

資金調達・創業融資を確認する

15. 設立後の届出を忘れる

会社設立登記が完了しても、税務署、自治体、年金事務所などへの届出が残っています。

届出先 主な手続き
税務署 法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など
都道府県・市町村 法人設立に関する届出
年金事務所 健康保険・厚生年金保険の新規適用届など
労働基準監督署 従業員を雇用する場合の労働保険に関する手続き
ハローワーク 従業員を雇用する場合の雇用保険に関する手続き
法人事業所など一定の条件を満たす事業所は、健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。役員だけの会社でも、役員報酬などの状況に応じて確認が必要です。

会社設立後にやることを確認する

16. 設立後の維持費を計算していない

会社を設立すると、売上が少ない時期でも継続的な費用が発生する可能性があります。

  • 法人住民税の均等割
  • 社会保険料
  • 税理士など専門家への報酬
  • 会計ソフトの利用料
  • 事務所の賃料と共益費
  • 法人口座や振込に関する手数料
  • 通信費とクラウドサービス利用料
  • 決算と法人税申告の費用

会社設立時の費用だけでなく、少なくとも事業開始後数か月分の固定費と運転資金を確認しておきましょう。

17. 会社設立前の確認リスト

  • 会社形態を比較した
  • 商号と商標を確認した
  • 事業目的と許認可の関係を確認した
  • 本店所在地で事業を行えることを確認した
  • 資本金と運転資金を分けて考えた
  • 決算月を事業の繁忙期などから検討した
  • 出資割合と意思決定方法を確認した
  • 定款の内容を確認した
  • 資本金の払込み方法を確認した
  • 登記書類の表記を統一した
  • 希望する設立日から逆算して準備した
  • 会社設立後の届出を整理した
  • 設立後の維持費を計算した

会社設立チェックリストを見る

18. 専門家への相談を検討したいケース

すべての会社設立で専門家への依頼が必要なわけではありません。ただし、次のような場合は早い段階で相談すると安全です。

  • 発起人や役員が複数いる
  • 共同経営者との権限関係が複雑
  • 現物出資を行う
  • 種類株式を発行する
  • 外国人や海外法人が関係する
  • 許認可が必要な事業を行う
  • 設立直後に融資を申し込む
  • 設立日を確実に合わせたい

登記は司法書士、税務は税理士、許認可は行政書士など、相談内容によって対応する専門家が異なります。

会社設立は誰に依頼する?

19. 会社設立の失敗に関するよくある質問

登記申請書に間違いがあると、すぐに却下されますか?

不備の内容が修正できるものであれば、法務局から補正を求められる場合があります。指定された期間内に補正できなければ、申請が却下される可能性があります。

登記申請後に事業目的の不足へ気づいた場合はどうなりますか?

設立後に事業目的を追加する場合は、定款変更の決議と変更登記が必要になります。許認可にも関係する場合は、申請先へ確認してください。

資本金を1円にしても問題ありませんか?

法律上設立できる場合でも、事業開始後の支払い、許認可、融資、取引先への説明などで問題になる可能性があります。必要な運転資金から金額を検討してください。

自宅を本店所在地にした後で変更できますか?

変更できますが、本店移転の登記や税務関係の届出、銀行、取引先などへの変更手続きが必要になります。

会社の設立日は登記が完了した日ですか?

原則として、会社設立登記の申請日が設立日になります。登記完了日とは異なります。

会社を設立したら社会保険へ必ず加入しますか?

法人事業所など、一定の条件を満たす事業所は健康保険・厚生年金保険の加入対象です。役員報酬や被保険者となる人の有無なども含め、管轄の年金事務所へ確認してください。

会社設立後に許認可を申請すれば問題ありませんか?

許認可によっては、定款の事業目的、資本金、事務所などに要件があります。会社設立や事務所契約の前に確認した方が安全です。

参考情報