会社設立時のお金を準備する

会社設立時の資金調達・創業融資|方法の違いと申請準備

会社を設立して事業を始めるには、資本金だけでなく、設備の購入費、仕入代金、広告費、家賃、人件費などの資金も必要です。このページでは、会社設立時に利用できる主な資金調達方法と、創業融資を申し込む前に準備しておきたい内容を解説します。

このページで分かること

  • 会社設立時に利用できる資金調達方法
  • 自己資金、融資、出資、補助金の違い
  • 日本政策金融公庫の創業融資の概要
  • 信用保証協会を利用する制度融資の仕組み
  • 創業計画書で整理する内容
  • 融資申込み前に準備したい書類
  • 資金調達で注意したいポイント

1. 会社設立時に必要な資金

会社設立時には、法務局へ納める登録免許税などの設立費用だけでなく、事業を開始して売上代金を回収するまでの資金も必要です。

設備資金

店舗、事務所、機械、車両、パソコン、什器など、事業を始めるための設備に使用する資金です。

  • 店舗や事務所の内装工事費
  • 機械や業務用設備の購入費
  • パソコンや事務用品の購入費
  • 営業用車両の購入費

運転資金

事業を継続するために必要となる、日常的な支払いに使用する資金です。

  • 商品や材料の仕入代金
  • 家賃、水道光熱費、通信費
  • 役員報酬や従業員の給与
  • 広告宣伝費や外注費

会社の資本金と、事業開始後に必要な資金は分けて考えます。売上が発生しても入金まで時間がかかる場合があるため、開業直後の支払いに耐えられる運転資金も見込んでおきましょう。

会社設立に必要な費用については、 会社設立にかかる費用でも確認できます。

2. 会社設立時の主な資金調達方法

創業時の資金調達には、主に次の方法があります。ひとつの方法だけに限定せず、事業内容や返済計画に合わせて組み合わせます。

方法 主な特徴 返済
自己資金 自分で貯めた預金などを事業に使用する 不要
融資 金融機関などから事業資金を借りる 必要
出資 株式などと引き換えに資金を受け入れる 通常は返済不要
補助金・助成金 条件を満たす事業や経費について支援を受ける 原則不要
親族などからの借入れ 親族や知人と契約を結んで資金を借りる 契約に従って返済
クラウドファンディング インターネットを通じて多数の人から資金を集める 方式によって異なる

3. 融資・出資・補助金の違い

比較項目 融資 出資 補助金・助成金
資金の返済 元金と利息を返済する 通常は返済しない 原則として返済しない
経営への関与 原則として株主にはならない 出資者が株主になる 株主にはならない
資金を受け取る時期 審査と契約後 契約と払込み後 事業実施後の支給が多い
主な注意点 毎月の返済を見込む必要がある 持株比率や経営権に影響する 対象経費、申請期限、実績報告などの条件がある

補助金や助成金は、採択や支給を約束された資金ではありません。原則として事業完了後に支払われる制度も多いため、開業時の支払いを補助金だけで賄う計画には注意が必要です。

4. 自己資金

自己資金とは、自分で蓄えてきた預金など、返済する必要がない資金です。創業時のすべての費用を自己資金だけで用意できない場合は、融資などと組み合わせます。

自己資金を確認できるようにする

融資の相談では、自己資金の金額だけでなく、どのように準備した資金なのかを確認されることがあります。給与から継続的に貯蓄している場合は、通帳などで資金の形成過程を説明しやすくなります。

  • 融資申込みの直前だけ口座残高を増やさない
  • 親族から受け取った資金は、贈与か借入れかを明確にする
  • 借入金を自己資金のように説明しない
  • 事業に使用した支出の領収書や契約書を保管する

必要な自己資金の割合は、事業内容、必要資金、収支計画、利用する融資制度などによって異なります。「自己資金が一定割合あれば必ず融資を受けられる」というものではありません。

5. 日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫は、創業者や小規模事業者などを支援する政策金融機関です。創業者向けには「新規開業・スタートアップ支援資金」などの融資制度があります。

新規開業・スタートアップ支援資金の概要

主な対象者 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
資金の使い道 事業開始時または事業開始後に必要な設備資金・運転資金
融資限度額 7,200万円
設備資金の返済期間 20年以内(据置期間5年以内)
運転資金の返済期間 10年以内(据置期間5年以内)

融資限度額は、申込者全員が借りられる金額ではありません。実際の融資金額、返済期間、据置期間、利率などは、事業計画や審査結果、適用される制度によって異なります。

資本金の払込みには利用できない

日本政策金融公庫の国民生活事業が取り扱うのは、店舗、機械、仕入れ、人件費などの事業資金です。法人設立時の資本金そのものを払い込むための資金には利用できません。

金利は申込み前に確認する

適用される利率は、利用する制度、資金の使い道、返済期間、担保の有無などによって異なります。金利情報は変わる可能性があるため、申込み時点の日本政策金融公庫の公式情報を確認してください。

6. 自治体の制度融資

制度融資とは、自治体、金融機関、信用保証協会などが連携して、中小企業や創業者の資金調達を支援する仕組みです。

  1. 利用できる制度を確認する

    所在地の都道府県や市区町村、金融機関などへ相談します。
  2. 金融機関へ申し込む

    創業計画書や必要書類を提出します。
  3. 保証と融資の審査を受ける

    金融機関や信用保証協会などが内容を確認します。
  4. 契約後に融資を受ける

    審査に通過した場合に契約と融資が行われます。

制度によっては、自治体が保証料や利息の一部を補助する場合があります。一方で、利用条件、限度額、利率、保証料、必要手続きは地域によって異なります。

信用保証協会の創業支援

信用保証協会には、創業者向けの「創業関連保証」や、一定の条件のもとで経営者保証を不要とする「スタートアップ創出促進保証制度」などがあります。

信用保証協会が保証する場合でも、融資を無条件に受けられるわけではありません。金融機関と信用保証協会による審査が行われます。

7. 出資による資金調達

出資では、投資家などから資金を受け入れ、その対価として会社の株式を発行します。融資のような定期返済は通常ありませんが、出資者が株主となる点に注意が必要です。

出資を受ける前に確認したいこと

  • 出資後の持株比率
  • 株主総会での議決権
  • 経営判断への関与
  • 将来の追加出資や株式譲渡
  • 株主間契約などの契約内容
  • 会社の評価額と発行する株式数

出資は返済不要という利点だけで判断できません。持株比率によっては、創業者が重要事項を単独で決められなくなる可能性があります。条件を十分に確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。

8. 補助金・助成金

国や自治体などでは、創業、設備投資、販路開拓、雇用などを支援する補助金・助成金を実施している場合があります。

補助金・助成金を利用するときの注意点

  • 申請すれば必ず受給できるわけではない
  • 申請前に契約や購入をすると対象外になる場合がある
  • 対象となる経費や実施期間が決められている
  • いったん自社で支払い、後から支給される制度が多い
  • 領収書、振込記録、実績報告などの提出が必要になる
  • 条件に違反すると減額や返還を求められる場合がある

募集される制度や条件は年度、地域、事業内容によって変わります。中小企業基盤整備機構のJ-Net21や、国・自治体の公式サイトで最新情報を確認しましょう。

9. 創業計画書で整理する内容

創業計画書は、どのような事業を行い、どのように売上を作って返済するのかを説明する資料です。融資を受けるためだけでなく、事業計画に無理がないかを確認するためにも役立ちます。

項目 整理する内容
創業の動機 なぜこの事業を始めるのか、これまでの経験とどう関係するか
経営者の略歴 勤務経験、担当業務、資格、事業に生かせる知識や技術
商品・サービス 提供内容、価格、特徴、顧客が選ぶ理由
取引先 販売先、仕入先、外注先、代金の回収・支払条件
必要な資金 設備資金と運転資金の内訳、金額の根拠
調達方法 自己資金、借入れ、出資などの内訳
収支計画 売上、原価、経費、利益、返済可能額の見込み

売上予測には根拠を付ける

売上は希望する金額ではなく、客数、客単価、営業日数、契約件数、稼働率などを使って計算します。見込み客、商談状況、予約、契約予定などがある場合は、説明できる資料を準備します。

売上を多く見せることよりも、計算方法と根拠を説明できることが重要です。売上が計画を下回った場合でも返済を続けられるか確認しましょう。

10. 融資申込み前に準備する書類

必要書類は、申込先、会社設立前後、事業内容、設備の有無などによって異なります。一般的には、次のような書類を準備します。

確認 主な書類 内容
□ 創業計画書 事業内容、必要資金、調達方法、収支計画など
□ 本人確認書類 運転免許証など申込者を確認できる書類
□ 預金通帳など 自己資金の金額や形成過程を確認できる資料
□ 見積書 設備、内装、車両など資金の使い道を確認する資料
□ 履歴事項全部証明書 設立済み法人の商号、所在地、役員などを確認する書類
□ 定款 会社の目的や基本事項を確認する書類
□ 許認可関係書類 許認可が必要な事業の場合に提出する書類
□ 事業を説明する資料 店舗資料、商品資料、契約書、注文書、資格証など
□ 申告書・決算書 すでに事業を営んでいる場合の実績資料

日本政策金融公庫へインターネットで申し込む場合も、創業計画書や見積書などの電子データが必要になることがあります。実際の必要書類は、申込み時点の案内を確認してください。

11. 創業融資で確認される主なポイント

審査基準のすべてが公開されているわけではなく、特定の条件を満たせば必ず融資を受けられるものでもありません。一般的には、次の内容を説明できるように準備します。

事業の実現可能性

  • 商品やサービスに需要があるか
  • 販売先や集客方法が具体的か
  • 必要な許認可を確認しているか

経験と能力

  • 業界経験や勤務経験があるか
  • 必要な技術や資格を持っているか
  • 不足する能力を補う体制があるか

資金計画

  • 必要資金の金額に根拠があるか
  • 自己資金を計画的に準備しているか
  • 借入額が過大になっていないか

返済可能性

  • 売上予測の根拠を説明できるか
  • 経費を漏れなく計上しているか
  • 利益から返済を続けられるか

個人の信用情報にも注意する

事業計画だけでなく、税金、公共料金、ローン、クレジットカードなどの支払い状況が確認される場合があります。支払いの遅れがある場合は放置せず、状況を整理してください。

12. 会社設立と資金調達の進め方

  1. 事業内容を具体化する

    顧客、商品、価格、販売方法、必要な許認可を整理します。
  2. 必要資金を計算する

    設備資金と運転資金に分け、見積書などで金額を確認します。
  3. 自己資金と不足額を確認する

    自己資金で不足する金額を把握し、必要な調達額を決めます。
  4. 資金調達方法を比較する

    日本政策金融公庫、制度融資、出資などを比較します。
  5. 創業計画書を作成する

    売上と経費の根拠、返済計画まで具体的にまとめます。
  6. 申込先へ事前相談する

    対象条件、必要書類、手続きの順番を確認します。
  7. 必要書類をそろえて申し込む

    提出前に記載漏れや金額の不一致がないか確認します。
  8. 審査・面談へ対応する

    創業理由や計画について、自分の言葉で説明します。
  9. 契約条件を確認する

    融資額、利率、返済期間、据置期間、返済額を確認します。

融資の実行には時間がかかる場合があります。店舗契約、設備購入、仕入れなどの支払日から逆算し、余裕を持って相談を始めましょう。

13. 資金調達で注意したいこと

  • 借りられる限度額を、そのまま必要額にしない
  • 売上が計画どおりになる前提だけで返済計画を作らない
  • 設備費だけでなく、開業後の運転資金も計算する
  • 補助金がすぐに入金される前提で契約しない
  • 見積書と創業計画書の金額を一致させる
  • 資金の使い道を申込内容から変更しない
  • 親族からの資金を曖昧な状態で受け取らない
  • 毎月の返済額だけでなく、総返済額も確認する
  • 会社と個人のお金を混在させない

融資を受けることが目的ではない

資金調達の目的は、事業を開始して継続させることです。融資を受けた後は、資金使途と残高を管理し、売上、経費、返済額を定期的に確認する必要があります。

会社設立後の経理、税務、社会保険については、 会社設立後の税務・社会保険手続きも確認してください。

14. 資金調達・創業融資のよくある質問

自己資金が少なくても創業融資を受けられますか?

自己資金だけで融資の可否が決まるわけではありませんが、必要資金、自己資金の形成過程、事業経験、収支計画、返済可能性などが総合的に確認されます。自己資金が少ない場合は、必要資金を抑えられないかも検討しましょう。

会社を設立する前でも融資の相談はできますか?

創業前でも相談できる制度があります。ただし、申込みや契約の時期、必要書類は制度によって異なります。会社設立の手続きを進める前に、申込先へ確認すると安全です。

融資金を資本金の払込みに使用できますか?

日本政策金融公庫の国民生活事業による融資は、設備資金や運転資金などの事業資金が対象です。法人設立時の資本金の払込みに使用する資金は対象外です。

補助金を使えば自己資金は不要ですか?

補助金は採択されるとは限らず、原則として後払いの制度も多いため、支払いに必要な資金を先に用意しなければならない場合があります。自己資金や融資とは分けて資金繰りを考えましょう。

融資限度額まで借りられますか?

融資限度額は制度上の上限です。実際の融資額は、必要資金、自己資金、事業計画、返済可能性などの審査によって決まります。

申込みから融資実行まで何日かかりますか?

申込先、申込内容、必要書類の状況、審査などによって異なります。支払日直前ではなく、事業計画が固まった段階で早めに相談してください。

創業計画書は専門家に作ってもらうべきですか?

支援を受けることはできますが、事業内容や数字の根拠を最も理解しているのは創業者本人です。面談でも自分の言葉で説明できるように、内容を理解したうえで作成しましょう。

公的機関の参考情報

融資制度、利率、補助金・助成金の募集内容は変更されることがあります。申込み前に、各公的機関や自治体の最新情報を確認してください。