会社設立前の準備
会社設立の事業目的の書き方|記載例・許認可・将来事業の注意点
事業目的は、会社が行う事業を定款に示す項目です。設立直後に行う事業だけでなく、近い将来に始める予定の事業も検討できます。ただし、内容が分かりにくい表現や、許認可で求められる事業名との不一致があると、定款の修正や設立後の目的変更が必要になる場合があります。事業内容を整理し、申請先や専門家へ確認してから確定しましょう。
事業目的を決めるときの要点
- 事業目的は、株式会社・合同会社の定款に記載する必須事項です。
- 違法な内容を避け、第三者が事業内容を理解できる表現にします。
- 現在行う事業と、具体的に予定している将来事業を整理します。
- 許認可が必要な事業は、申請先が求める事業名を設立前に確認します。
- 最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」を加える例があります。
- 記載例をそのまま使わず、自社の取引内容に合わせて調整します。
会社の事業目的とは
事業目的とは、会社がどのような事業を行うかを示すものです。会社の定款に記載し、設立登記後は登記事項証明書でも確認できます。取引先、金融機関、許認可の申請先などが会社の事業内容を確認するときにも使われます。
日本公証人連合会は、会社の目的を、商号などとともに会社を識別する基準であり、株主や取引先にとって重要な定款の絶対的記載事項と説明しています。株式会社では公証人による定款認証を受けるため、認証を依頼する公証役場への事前確認も有効です。
株式会社
目的は定款の必須事項です。設立時の定款は公証人による認証を受けます。
合同会社
目的は定款の必須事項です。合同会社の定款には公証人による認証はありません。
会社形態による定款や設立手続きの違いは、株式会社と合同会社の違いで確認できます。
事業目的の書き方で確認する3つの点
1. 適法性
法令に反する事業を目的にすることはできません。許可、認可、登録、免許、届出などが必要な事業は、会社を設立しただけで営業できるとは限らないため、営業開始の条件も分けて確認します。
2. 営利性
会社は利益を得ることを目的として事業を行う法人です。株式会社や合同会社の事業目的は、会社の営利事業として理解できる内容にします。
3. 明確性
日本公証人連合会によると、現在は目的の具体性そのものは登記官の審査対象ではありませんが、適法性、営利性、明確性は必要とされています。抽象的な言葉だけで済ませず、第三者が読んで事業の種類を理解できる表現にしましょう。
具体性と明確性は分けて考える
商品名やサービス名を細かく並べなければ登記できないという意味ではありません。一方で、「各種事業」「サービス業」など範囲が分かりにくい表現だけでは、取引先や許認可の申請先が実際の事業を判断しにくくなります。主な商品、役務、取引方法が伝わる表現へ整えます。
事業目的を作る5つの手順
1. 収益を得る事業を洗い出す
誰に、何を、どのような方法で提供するかを整理します。商品販売、受託制作、仲介、コンサルティングなど、売上につながる取引を具体化します。
2. 開始時期で分ける
設立直後に行う事業と、具体的な計画がある将来事業に分けます。構想だけで関連性の低い事業は、記載する必要性を見直します。
3. 許認可の有無を確認する
許認可が必要な場合は、管轄する行政機関に事業目的の表現を確認します。設立登記が終わってから確認すると、目的変更が必要になることがあります。
4. 項目を整理して並べる
中心となる事業を先に置き、関連事業、将来事業の順に整理すると、会社が何をするのか伝わりやすくなります。
5. 公証役場などへ確認する
株式会社は定款認証を依頼する公証役場へ事前に相談できます。登記、許認可、契約への影響が不明な場合は、司法書士や行政書士などにも確認します。
商号、本店所在地、資本金などを含む設立前の検討順序は、会社設立前に決めることで確認してください。
業種別の事業目的記載例
次の文言は、事業目的を検討するための一般的な例です。実際の事業内容、契約形態、取り扱う商品、必要な許認可によって適切な表現は変わります。そのまま定款へ転記せず、自社の計画と申請先の要件に合わせて調整してください。
| 業種・事業 | 検討用の記載例 | 確認点 |
|---|---|---|
| IT・ソフトウェア | ソフトウェアの企画、開発、販売、保守及び運用 | 受託開発、販売、運用など実際の提供範囲を確認 |
| ウェブ制作 | ウェブサイトの企画、制作、運営及び保守 | 広告運用やデザイン業務も行うか確認 |
| インターネット通販 | インターネットを利用した通信販売業 | 取り扱う商品に個別の許可や届出がないか確認 |
| コンサルティング | 経営に関するコンサルティング業務 | 相談分野を明確にし、資格者だけが行える業務を含めない |
| 飲食店 | 飲食店の経営 | 営業形態に応じて保健所や警察署などへの手続きを確認 |
| 建設業 | 建築工事及び土木工事の請負、設計、施工及び監理 | 実際の工事業種と建設業許可の区分を申請先へ確認 |
| 不動産業 | 不動産の売買、賃貸、管理及び仲介 | 宅地建物取引業を行う場合は免許申請との整合を確認 |
| 中古品販売 | 中古品の買取、販売及び輸出入 | 取り扱い区分と古物商許可の申請内容を確認 |
同じ業種でも、店舗販売と通信販売、自己所有物件の賃貸と仲介業、システム開発と人材派遣では必要な表現や許認可が異なります。名称だけで判断せず、実際の取引内容から確認してください。
将来行う事業を記載するときの考え方
設立時点でまだ開始していなくても、近い将来に行う具体的な計画がある事業を目的へ含めることはできます。あらかじめ記載しておけば、その事業を始める際に目的追加の手続きを避けられる場合があります。
ただし、関連性のない事業を大量に並べると、会社の中心事業が伝わりにくくなります。法人口座、融資、取引開始などの場面で事業計画との関係を説明することも考え、記載する理由を説明できる範囲に整理しましょう。
記載するか迷ったときの判断基準
- 事業計画や予算に具体的な予定があるか
- 現在の事業と顧客、商品、技術などの関連性があるか
- 許認可や設備、人員を準備できる見込みがあるか
- 取引先や金融機関へ追加した理由を説明できるか
「前各号に附帯又は関連する一切の事業」は必要か
日本公証人連合会の株式会社の定款記載例では、個別の事業目的の後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という項目が置かれています。主な事業に付随または関連して行う業務を含めるための一般的な表現です。
この一文があれば、個別に記載していない独立した事業を無制限に行えるという意味ではありません。会社の中心となる事業や、許認可で明示が必要な事業は、それぞれ具体的な項目として記載します。
許認可が必要な事業の注意点
日本公証人連合会の定款記載例では、許認可が必要な事業を目的へ含められる一方、法令に沿った事業名を記載していないと許認可申請が受理されない場合があると注意されています。
許認可ごとに、目的の表現、営業所、資本金や財産的基礎、資格者、役員の要件などが異なります。目的だけを整えても許可を取得できるわけではありません。会社の基本事項を確定する前に、管轄行政庁の窓口や専門家へ確認してください。
- 建設業許可は、予定する建設工事の種類を確認する
- 宅地建物取引業免許は、実際に行う不動産取引を確認する
- 有料職業紹介事業や労働者派遣事業は、サービスの仕組みを確認する
- 古物商許可は、取り扱う中古品と取引方法を確認する
- 飲食店営業は、店舗の業態と提供内容を確認する
許認可が必要な主な業種と確認先は、会社設立に許認可が必要な業種一覧で確認できます。許認可申請を含めて相談したい場合は、会社設立を行政書士に依頼できる業務も参考にしてください。
事業目的でよくある失敗
許認可の確認を設立後に行う
必要な事業名が目的に入っておらず、定款変更と変更登記が必要になる場合があります。
抽象的な言葉だけで記載する
会社が何を提供するのか判断しにくくなります。商品、役務、取引方法が伝わる表現へ整えます。
記載例をそのまま使う
実際の事業や契約と一致しない項目が残る可能性があります。不要な項目を削り、必要な項目を追加します。
予定のない事業を大量に並べる
中心事業が伝わりにくくなります。将来事業は、具体的な計画と関連性を基準に絞ります。
会社形態を変えても同じ定款を使う
株式会社と合同会社では定款の必須事項や設立手続きが異なります。会社形態に合う記載例を使います。
他の書類と表現が一致していない
定款、登記書類、許認可申請書、事業計画書で事業内容の説明がずれないよう確認します。
設立後に事業目的を変更する場合
会社設立後でも、事業目的を追加、削除、修正できます。会社形態と定款の定めに従って変更を決定し、定款を変更したうえで、法務局へ目的変更の登記を申請します。
変更登記には登録免許税がかかり、許認可、金融機関、取引先との契約、ウェブサイトの会社情報なども確認が必要です。新事業の開始日から逆算し、許認可の申請と目的変更の順序を整理しましょう。
変更登記や定款の作成を依頼する場合は、会社設立を司法書士に依頼できる業務を参考にしてください。
事業目的に関するよくある質問
事業目的はいくつまで記載できますか?
一律の上限を基準に決めるのではなく、実際に行う事業と具体的に予定する事業を整理します。項目が多い場合は、重複をまとめ、中心事業が分かる順序に並べます。
将来行うかもしれない事業も入れられますか?
近い将来に行う具体的な予定がある事業は検討できます。ただし、予定も関連性もない事業を大量に記載すると、会社の実態が分かりにくくなる可能性があります。
事業目的の順番に決まりはありますか?
中心となる事業から先に記載すると、第三者が会社の事業内容を理解しやすくなります。関連事業、将来事業、附帯・関連事業の項目という順に整理する方法があります。
目的にない事業を始めることはできますか?
新事業が既存の目的に含まれるかは、記載内容と実際の事業によって判断が必要です。許認可や契約への影響もあるため、開始前に目的変更の要否を司法書士、行政書士、申請先などへ確認してください。
事業目的は自分で作成できますか?
自分で作成できます。ただし、株式会社の定款認証、設立登記、許認可との整合に不安がある場合は、確定前に公証役場や関係機関、専門家へ確認しましょう。
主な確認先
事業目的の適切な表現は、実際の事業内容と許認可によって異なります。定款へ記載する前に、認証を依頼する公証役場、管轄法務局、許認可の申請先、司法書士や行政書士などへ最新情報をご確認ください。
