設立後の準備

電子契約サービスの選び方|導入方法・電子署名・契約書管理の注意点

電子契約を導入すると、契約書の印刷、製本、押印、郵送などの作業を減らし、契約締結までの時間を短縮できます。ただし、サービスの料金だけで選ぶのではなく、本人確認、電子署名、操作記録、保存方法なども確認することが重要です。

このページでは、会社設立後に電子契約を導入するときの基本的な考え方、サービスの選び方、社内ルール、電子帳簿保存法への対応について解説します。

電子契約導入の要点

導入前の確認
電子化する契約と、紙での対応を残す契約を整理します。
サービス選び
本人確認、操作記録、保存、検索、権限管理などを比較します。
社内ルール
契約の作成、確認、承認、締結、保存を誰が行うか決めます。
契約データの保存
締結済みの契約書だけでなく、締結過程を確認できる記録も保存します。
法令への対応
電子署名法、電子帳簿保存法、印紙税などを確認します。

1. 電子契約とは

電子契約とは、紙の契約書へ署名や押印をする代わりに、インターネット上で契約内容を確認し、電子署名などを利用して契約を締結する方法です。

一般的な電子契約サービスでは、契約書をアップロードし、相手方へ確認依頼を送り、双方が内容に同意すると契約が締結されます。締結後は、契約書のデータや署名履歴、操作記録などが保存されます。

紙の契約

  • 契約書を印刷・製本する
  • 署名または押印を行う
  • 郵送や対面で受け渡す
  • 原本を保管する

電子契約

  • 契約書を電子データで作成する
  • オンラインで内容を確認する
  • 電子署名などで締結する
  • 契約書と操作記録をデータで保存する

2. 電子契約を導入するメリット

契約締結を早めやすい

郵送による受け渡しが不要になるため、相手方が遠方にいる場合でも契約手続きを進めやすくなります。

契約事務を減らせる

印刷、製本、押印、封入、郵送、返送確認などの作業を減らせます。

契約書を探しやすい

契約日、取引先、契約名などで検索できれば、紙のファイルから探すより管理しやすくなります。

契約状況を確認しやすい

送信済み、相手方確認中、締結済みなど、契約の進行状況を確認できるサービスがあります。

ただし、取引先が電子契約に対応していない場合や、契約内容によって書面の要否を個別に確認する必要がある場合もあります。紙の契約をすぐに全廃するのではなく、電子化しやすい契約から段階的に導入する方法が安全です。

3. 電子署名方式の違い

電子契約サービスでは、主に「当事者型」と「立会人型」と呼ばれる方式があります。サービスによって名称や本人確認の方法が異なるため、実際の仕様を確認してください。

当事者型

契約当事者本人の電子証明書などを利用して、当事者が電子署名を行う方式です。

  • 本人性を慎重に確認する契約に向いている
  • 電子証明書の取得や管理が必要になる場合がある
  • 導入や相手方の操作に手間がかかることがある

立会人型

利用者の指示に基づいて、電子契約サービス事業者が電子署名を付与する方式です。

  • メール認証などで利用できるサービスが多い
  • 取引先が利用しやすい
  • 本人確認や操作記録の内容を確認する必要がある

どちらか一方が常に優れているわけではありません。契約金額、取引の重要度、本人確認の必要性、取引先の利用しやすさなどを基準に選びます。

4. 電子契約を利用しやすい契約

一般的な企業間取引で継続的に作成する契約書は、電子契約を導入する効果が出やすい傾向があります。

  • 業務委託契約書
  • 秘密保持契約書
  • 売買契約書
  • 取引基本契約書
  • 保守契約書
  • 代理店契約書
  • 雇用契約書や労働条件に関する書類
  • 契約内容を変更する覚書
  • 発注書や注文請書

電子化できるかどうかは、書類の名称だけでは判断できません。法令上必要な手続き、相手方への交付方法、本人の同意などを契約ごとに確認してください。

5. 紙での対応も検討したい契約

契約の種類や法令によっては、書面による作成や交付が求められたり、電子化に相手方の承諾が必要になったりする場合があります。

  • 法令上、書面の作成や交付について特別な規定がある契約
  • 公正証書の作成が必要になる契約
  • 行政機関や金融機関などが指定する形式での提出が必要な書類
  • 取引先が電子契約に対応していない契約
  • 非常に高額または重要で、厳格な本人確認が必要な契約
  • 海外企業との契約など、準拠法や現地法の確認が必要な契約

6. 電子契約サービスの選び方

月額料金や知名度だけでなく、実際に使用する契約と社内の承認手順に合うかを確認します。

確認項目 確認する内容
署名方式 当事者型、立会人型など、利用できる電子署名方式
本人確認 メール認証、二要素認証、本人確認書類などの対応
操作記録 送信、閲覧、同意、署名などの日時や履歴を確認できるか
権限管理 作成者、承認者、送信者、管理者の権限を分けられるか
承認機能 社内承認後に相手方へ送信する流れを設定できるか
保存・検索 取引先、契約日、契約金額などで検索できるか
データ出力 契約書と締結記録をダウンロードできるか
セキュリティ 通信・保存時の暗号化、アクセス制限、ログ管理など
外部連携 顧客管理、会計、文書管理などのシステムと連携できるか
料金 月額料金、送信件数、保管容量、追加利用者の費用
サポート 初期設定やトラブル発生時の問い合わせ方法

契約書の送信件数が少ない会社でも、将来の利用者数や保管する契約書の増加を考えて選びましょう。無料プランがある場合も、保存期間、出力機能、権限設定などに制限がないか確認します。

7. 本人確認と証拠の残し方

電子契約では、契約内容だけでなく、「誰が、いつ、どのような方法で同意したか」を確認できることが重要です。

  • 契約相手の氏名、会社名、部署、役職を確認する
  • 送信先メールアドレスが正しいか確認する
  • 必要に応じて二要素認証を利用する
  • 契約締結の権限を持つ人か確認する
  • 契約書の送信、閲覧、同意、締結の履歴を保存する
  • 契約書の変更や改ざんを確認できる仕組みを利用する
  • 重要な契約では本人確認の方法を強化する

メールアドレスだけで確認する方式は利用しやすい一方、メールアカウントの共有や不正利用によるリスクがあります。契約の重要度に応じて、認証方法を変更できるサービスが便利です。

8. 電子契約の導入手順

  1. 現在使用している契約書の種類と件数を確認する
  2. 電子化する契約と紙で残す契約を分ける
  3. 契約書の作成・確認・承認・締結の流れを整理する
  4. 必要な本人確認と電子署名の方式を決める
  5. 複数の電子契約サービスを比較する
  6. 少数の契約で試験運用する
  7. 社内ルールと操作手順を作成する
  8. 取引先へ電子契約の利用方法を案内する
  9. 契約書と締結記録の保存方法を確認する
  10. 運用開始後に権限や契約状況を定期的に見直す

9. 社内ルールで決めること

電子契約サービスを導入しても、誰でも自由に契約書を送信できる状態にすると、誤送信や無断契約などの問題につながります。

項目 ルールの例
契約書の作成 使用できるひな形と、変更時の確認方法を決める
内容の審査 法務担当者や責任者が確認する契約の基準を決める
承認 契約金額や契約内容に応じた承認者を決める
送信 相手方へ契約書を送信できる担当者を限定する
アカウント管理 共有アカウントを避け、利用者ごとに権限を設定する
契約書の保存 保存先、ファイル名、検索項目、保存期間を決める
退職・異動時 アカウント停止と担当契約の引継ぎを行う

10. 電子帳簿保存法と契約書の保存

電子契約でやり取りした契約書は、電子帳簿保存法上の「電子取引データ」に該当する場合があります。電子データで受け取った契約書は、原則として電子データのまま保存する必要があります。

  • 締結済み契約書の電子データを保存する
  • 自社が受け取ったデータだけでなく、送ったデータも保存する
  • 改ざんを防止または確認できる措置を取る
  • 必要な契約書を画面や書面で確認できるようにする
  • 日付、金額、取引先などで検索できる状態を整える
  • 税務調査などで求められたときに提示できるようにする

電子契約サービス上に保存されているだけで、自社に必要な保存要件をすべて満たすとは限りません。契約書の検索方法、保存期間、サービス解約後のデータ出力方法も確認してください。

11. 電子契約と印紙税

印紙税は、印紙税法で定められた課税文書を作成した場合に課されます。電子データとして契約を締結し、課税文書となる紙の契約書を作成・交付しない場合は、一般にその電子データへ収入印紙を貼る必要はありません。

ただし、同じ契約について紙の契約書も作成する場合や、紙で作成した文書が課税文書に該当する場合は、印紙税が必要になる可能性があります。

  • 電子契約と紙の契約書を併用する場合
  • 契約内容を証明する紙の覚書や変更契約書を作成する場合
  • 電子契約後に当事者が署名・押印した紙の文書を作成する場合
  • 注文書、注文請書、覚書など別名称の文書を作成する場合

印紙税は、書類の表題だけでなく実際の記載内容によって判断されます。課税関係が不明な契約は、税務署または税理士へ確認してください。

12. 電子契約で必要なセキュリティ対策

  • 利用者ごとに個別のアカウントを発行する
  • 推測されにくいパスワードを設定する
  • 二要素認証を有効にする
  • 契約書の作成者、承認者、送信者の権限を分ける
  • 不要になったアカウントを速やかに停止する
  • 操作履歴や管理者ログを定期的に確認する
  • 相手方のメールアドレスを送信前に再確認する
  • 契約書を社外へ誤送信した場合の対応手順を決める
  • 契約データのバックアップや出力方法を確認する

特に注意したいのが送信先の間違いです。契約書には住所、氏名、取引金額、振込先などの重要情報が含まれるため、送信前に宛先と添付する契約書を複数人で確認する方法も検討しましょう。

13. 電子契約導入時によくある失敗

料金だけでサービスを選ぶ

必要な本人確認、権限管理、検索、データ出力が利用できず、後からサービスを変更することがあります。

承認手順を決めていない

担当者が責任者の確認を受けずに、契約書を送信してしまうおそれがあります。

取引先への説明が不足する

突然電子契約のメールを送ると、迷惑メールや不審なメールと判断されることがあります。

サービス内だけで保存する

解約やシステム変更の際に、契約書や締結記録を確認できなくなる可能性があります。

共有アカウントを使用する

誰が契約書を作成・送信したのか分からなくなり、不正利用の原因にもなります。

すべて電子化できると判断する

契約内容や法令上の条件を確認せずに電子化すると、必要な手続きを満たせない場合があります。

14. 電子契約サービス導入前チェックリスト

  • 電子化する契約書の種類を決めた
  • 紙での対応を残す契約を確認した
  • 取引先が電子契約に対応できるか確認した
  • 必要な電子署名方式と本人確認方法を決めた
  • 契約書の作成、確認、承認、送信の担当者を決めた
  • 利用者ごとの権限を決めた
  • 契約書と締結記録の保存方法を確認した
  • 電子帳簿保存法への対応を確認した
  • サービス解約時のデータ出力方法を確認した
  • 誤送信やアカウント不正利用への対策を決めた
  • 取引先へ案内する文章を用意した
  • 少数の契約で試験運用を行った

15. 電子契約についてよくある質問

電子契約には法的効力がありますか?

電子契約であることだけを理由に、契約が無効になるわけではありません。ただし、契約の成立や本人の意思を確認できることが重要です。契約内容、本人確認、電子署名、締結記録などを適切に保存してください。

電子署名と画像の印鑑は同じものですか?

同じものではありません。印影画像を契約書へ貼り付けるだけでは、誰が操作したのか、契約後に内容が変更されていないかを十分に確認できない場合があります。電子署名や操作記録を利用できるサービスを検討しましょう。

取引先も同じ電子契約サービスへの登録が必要ですか?

サービスによって異なります。相手方がアカウントを作成せず、メールから契約内容を確認できるサービスもあります。取引先側の料金や登録の要否も比較してください。

電子契約では収入印紙が不要ですか?

電子データだけで契約を締結し、課税文書となる紙の契約書を作成・交付しない場合は、一般に電子データへ収入印紙を貼る必要はありません。紙の契約書や覚書も作成する場合は、個別の確認が必要です。

電子契約書を印刷して保存すればよいですか?

電子取引として受け取った契約書は、電子帳簿保存法に従って電子データのまま保存する必要があります。印刷した紙だけを保存するのではなく、元の電子データを適切に管理してください。

無料の電子契約サービスでも問題ありませんか?

必要な本人確認、操作記録、保存期間、検索、データ出力、権限管理が利用できるかによります。無料か有料かだけで判断せず、契約の重要度と必要な機能を基準に選んでください。

過去の紙の契約書も電子契約に変更できますか?

紙で締結した契約書をスキャンして管理することはできますが、スキャンしただけで元の紙の契約が電子契約に変わるわけではありません。原本の保存要否やスキャナ保存の要件を確認してください。

参考情報

電子契約や電子取引データの保存制度は変更される可能性があります。導入時には、次の公的機関が公開している最新情報も確認してください。

掲載内容は一般的な情報です。個別の契約の有効性、電子化の可否、保存方法、印紙税の判断については、契約内容に応じて専門家または関係機関へご確認ください。

次に確認したいこと

会社設立後に必要な手続きを確認しましょう

税務、社会保険、法人口座など、設立後に進める手続きを一覧で確認できます。

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